情報誌「医療人」®

今月の医療人紹介

(2013年6月1日掲載)

いがらし内科外科クリニック 院長 二瓶 光博 氏


現代の日本人女性においてもっとも罹患率の高い乳がん疾患。 心配事や不安を抱える女性たちと真摯に向きあい十分に時間をかけて行う診療が患者さんの心も支えている

JR郡山駅から北西へ車で10~15分、郡山市の都市計画道路の一つである内環状線沿いにあるいがらし内科・外科クリニックを訪ねた。乳腺専門医である院長の二瓶光博先生は、福島県立医科大学第2外科在局中から長年にわたり乳腺疾患の診療・研究を続けてきた。いがらし内科・外科クリニックは無床診療所であるが、乳がん手術についても病診連携先の病院で二瓶先生が担当している。乳がんは早期発見であれば治る確率が非常に高い病気だが、検診へのイメージや羞恥心などから受診が遅れてしまうケースも少なくない。そのような中、優しい言葉で患者さんが納得できるように時間をかけて説明をしてくれる二瓶光博先生はとても相談しやすく心強い存在だ。


クリニックの乳腺専門医として
先生は連携先の病院で乳がんの手術を行っているそうですが、どのような診療をされているのでしょうか

 私は、福島県立医科大学第二外科在局中から30年近く、乳がんの診療と研究に携わっています。今から20年ぐらい前のことになりますが、大学を出てからは郡山市内の病院勤務医になり、乳がんを中心に消化器外科全般の手術も行っていました。その後、当クリニックに移り初めの頃は消化器の患者さんも診ていましたが、次第に乳腺と甲状腺の患者さんが多くなり、今はそれらを中心とした外来診療を行っています。
 乳腺外来では、マンモグラフィと乳腺専用の超音波装置で行う検査、必要に応じて超音波ガイド下に穿刺吸引細胞診や針生検(※1)を行い診断します。乳がんで治療が必要と判断すれば、患者さんに診断根拠と治療法を十分に説明し、ご本人の希望にそってしかるべき医療機関をご紹介することにしています。そこで患者さんの希望があった場合や当クリニックでの治療を了承していただいた場合は、私が手術を担当いたします。当クリニックは、無床診療所で入院治療は行えないため、公益財団法人星総合病院に入院していただき、私が執刀させていただいています。このシステムは、星総合病院院長代行で乳腺専門医の野水整先生のご好意により実現しました。野水整先生とは第二外科在局中から乳腺疾患の診療や研究を行ってきました。このような関係から、私がクリニックに勤務してからも星総合病院で手術をさせていただくことができ、乳腺疾患の診断と手術を含めた治療を行うことができていると思っています。 
 当クリニックで乳がんの治療を行う場合は、まずMRI検査やCT検査などで全身評価をします。さらに、針生検(※1)で病理組織学的に診断を確定し、ホルモン療法に対する反応性などの生物学的な特徴を調べます。そして、その結果と腫瘤の大きさや位置さらに腋窩リンパ節の状況などを踏まえ、適切な術式や薬物療法について検討します。その後、最終的にご家族に同席していただきながらご本人に説明を行い、同意が得られたなら術前検査のために星総合病院外科外来を一回だけ受診していただきます。そこで問題がなければ、あとは手術前日に入院をしていただくような流れになります。
 近年の乳がん手術は縮小化され、現在は乳房を部分切除する乳房温存手術が主流です。腋窩リンパ節に対しては、見張りリンパ節生検を行った結果で転移がなければ、腋窩リンパ節郭清を省略する侵襲の少ない手術が多くなっています。このように、手術が小さくなったことで入院期間は7日から10日程度で済むようになりました。 当クリニックの患者さんが入院している間は、休診日などを利用して様子を見に行くようにしていて、退院後は再び通院していただき、抜糸などの創処置や必要に応じてホルモン療法や抗癌剤投与などの薬物療法を行っています。
 甲状腺外来の患者さんは全体の三分の一程度ですが、乳腺の患者さんの場合もまず甲状腺から触診を行っています。第二外科が伝統的に甲状腺疾患を研究テーマにしてきたので、大学時代からの習慣で必ず甲状腺を触診しています。甲状腺の腫瘤は1cm以下の大きさでも触れることがあります。正常甲状腺は柔らかいため触知しませんが、腫瘤を触れたり甲状腺全体が硬く触れたりする場合には、引き続き超音波検査を行っています。  


先生は病院での勤務経験を経てクリニックで診療をされるようになりましたが、クリニック診療に良さを感じるのはどのような場面でしょうか

 乳腺外来は女性中心の外来です。患者さんの中には、腫瘤を自覚して受診する方もいますが、病院と違ってクリニックを受診する方の多くは、乳房痛や違和感あるいは何となく気になるといった理由からです。こういった症状から乳がんを心配して来院される方が多いのですが、乳腺外来がある病院の多くは予約制で、急な患者さんに対応できる体制にはありません。また、病院の先生は、外来診療以外に手術や入院患者さんの治療もしているため、時間的に余裕がありません。このようなことから、予約以外の患者さんたちにゆっくり接することができないのが現状だと思います。
 これに対して、当クリニックは予約制をとっていないので、急な患者さんにも柔軟に対応することができます。そして、患者さんの納得がゆくまで病状や治療方針などについて説明することができます。そうすることが患者さんの不安解消につながると考えています。さらに、病院のように医師の異動がありませんので、いつも同じ場所で同じ医師の診察を受けられることがより安心感につながるのではないかと思います。当クリニックには開院当初からずっと勤務している看護師もいて、私よりも患者さんの信頼を集めているようです。普段の診療では、患者さんと日常的な話をしたり冗談を言ったりしながら、少しでも不安や悩みを取り除けるように心掛けています。こうしたことがクリニックで診療を行う利点だと考えていますし、私にはこのような診療スタイルが合っていると思っています。

乳がん患者の増加や罹患率について
実際の診療を通して乳がん疾患の増加を感じていますか

 私が福島県立医科大学の第二外科に入局した昭和60年前後のことですが、当時は乳がんの患者さんが少なく第二外科での乳がん年間手術症例数は20~30例程度でした。また、社会的にも今とは違い乳がんへの関心が低かったので、乳がんは一般外科分野の中で重箱の隅のような立場でした。このような状況にある中、第二外科に乳腺を専門とする教授が着任され乳腺グループができました。 それから徐々に乳がん患者さんが増え、第二外科の乳がん年間手術症例数は2~3年後に40~50例ぐらいになりました。その後、日本人の乳がん罹患数は増加の一途をたどり、今では女性の悪性腫瘍の中で最も罹患率の高いがんになり社会的な関心が高まっています。このような乳がん患者さんの増加は、当クリニックの診療の中でも実感しています。私がここで勤務を始めた頃の乳がん診断数は十数例でしたが、ここ数年は毎年30例以上で昨年は40 例を越えました。



乳がん検診の受診率についてはいかがでしょうか

 私は、郡山市乳がん検診の実務を担当しているので、市の受診率の推移をずっと見てきました。触診だけで逐年検診を行っていた最後の年は平成13年度で、そのときの受診者数が約1万2千人でした。翌年の平成14年度にはマンモグラフィ検診が導入され、2年に1度の検診となったため、受診者数は約6千人と半減しました。

作成 : " いがらし内科外科クリニック 院長 二瓶 光博先生 "
それからは、乳がんに対する関心の高まりとともに受診者数は増加傾向となり、数年前までに年間8千人程度まで増えましたが、その後はやや減少して平成24年度が約7千人でした。国では、乳がん検診受診率を50%以上に高めることを目標にしていますが、郡山市の受診率は平成22年度で24.5%、全国的な統計でも20数%と低いのが現状です。ただ、実際には市の検診などの公的な乳がん検診を受診されていない方の中に、検診目的でクリニックを受診したり、会社の検診やドック検診で要精密検査になってクリニックを受診したりする方が相当数います。このような方々は、市や国などの検診受診率の中には反映されていません。ですから日本では、欧米などのように実際の正確な乳がん検診受診率を計算するのは困難だと思っています。

乳腺疾患について
乳がんやそれ以外の乳腺疾患に関するさまざまな情報が溢れていますが、先生はどのようにお考えでしょうか

 近年、乳がん患者数は増え続けていますので、身近に乳がんの患者さんがいる方も少なくないと思います。また、テレビや雑誌で乳がんがテーマに上がることも多くなり、女性の皆さんにとって最も関心のある疾患の一つになっています。現代は、インターネットの普及により誰もが簡単にありとあらゆる乳がんに関する情報を引き出せるようになりました。その中には、専門家による正しい情報もありますが、間違った情報もたくさんあるため、医学的知識のない一般の方がそれらを正しく判別することは容易でないと思います。これまで診てきた患者さんの中には、ご自身で判断された医学的に根拠のない治療法に入り込んでしまい、クリニックを受診された時には手遅れになっていた方が何人かいました。こうした情報の中には、腫瘤性病変の鑑別について書かれたものもありますが、自覚した腫瘤が良性腫瘍か乳がんかを自己判断することはたいへん危険です。乳腺専門医が触診や画像診断で良性と判断しても細胞診で悪性と出ることもあり、ましてや一般の方が情報に当てはめて自己判断することは最善の治療を受ける機会を逃してしまう危険性があります。ですから、一人で不安を抱えているよりも、気になることがあれば受診していただきたいと思います。


乳がんは罹患年齢によって違いがあるのでしょうか

 乳がんはどの年代の乳がんでも基本的には同じです。ただ、細胞の活動性という面では年齢による違いがあるようで、70~80歳代の乳がんは閉経前の乳がんに比べゆっくり増殖することが多いように思います。現在の日本人の乳がんは増加傾向にあり、40歳代半ば以降での罹患率上昇が目立っています。

出典 : " 「図説臨床[癌]シリーズ」乳癌 "から抜粋
 
 年齢別罹患率をグラフで見ると、閉経前は日本人と欧米人の罹患率にあまり差はありませんが、閉経後の罹患率に大きな差があります。欧米人は70歳代まで上昇して行くのに対して日本人は50歳代半ばから下降しています。ただし、近年、日本人の乳がん増加傾向は閉経後に目立っており、罹患率傾向が欧米人に近づいているとも言えます。このような罹患率の経年的変化を見ると、これまで乳がんが少ない民族と言われていた日本人に変化が起きていることが分かります。以前から、アメリカに住む日系人は乳がん罹患率が高いということがありましたので、近年の著しい乳がん罹患率上昇の原因の一つとして、食生活の欧米化などが影響していると考えることができます。  

 35歳未満の乳がんは若年性乳がんといわれます。実際の罹患率は低く、20歳代前半では稀です。ただし、この年代は卵巣機能が活発で、卵巣で作られるホルモンの影響を強く受けるホルモン依存性がんである乳がんの増殖能は、高齢者の乳がんより高いと考えらます。この点で、同じ乳がんであっても若年者と高齢者の場合は別物と考えてもよいため、若年者ほど早期発見に努めるべきだと言えます。  
 近年、乳がん細胞の遺伝子発現状況が予後や薬物の治療効果予測に役立つことが分かってきました。乳がんを遺伝子レベルでいくつかのサブタイプに分け、タイプ毎に最適な治療法を考慮する時代になっています。しかし、遺伝子そのものを調べる検査は保険適応ではないため費用がかかります。  
 実際のタイプ分けは、エストロゲン(卵胞ホルモン)(※2)に対する受容体の、エストロゲンレセプター(estrogen receptor :ER)(※3)プロゲステロン(黄体ホルモン)(※4)に対する受容体のプロゲステロンレセプター(progesterone receptor:PgR)(※5)HER2(human epidermal growth factor receptor 2)(※6)などの発現を免疫組織染色で調べ、それらの組み合わせで分けています。どのようなタイプがあるかというと、ER(※3)が陽性でHER2(※6)が発現しておらずホルモン療法の効果が期待できるおとなしく再発率の低いタイプ、HER2(※6)が発現していて予後が悪いとされても分子標的薬(※7)のハーセプチン(一般名トラスツズマブ)が使え予後改善が期待できるタイプ、ER(※3)PgR(※5)HER2(※6)が三つとも陰性でホルモン療法やハーセプチンに反応せず予後の悪いトリプルネガティブタイプなどがあります。トリプルネガティブタイプ乳がんは、術後1年程度で再発し様々な治療法にも抵抗し短期間で不幸な転機をたどることもあります。その中でも特に若年者の場合に、より予後が悪い印象です。  


乳がん以外の疾患で、乳腺症という言葉を聞きますがどのような疾患なのでしょうか

 我々は、何となく違和感があるという理由や乳房痛などを訴えて来院された場合に、悪性疾患とも良性疾患とも診断できないと、乳腺症という病名をつけることがよくあります。痛みなどの臨床症状や超音波検査の所見から、便宜的に病名をつけている面がありますが、乳がん検診で精密検査になった場合も、多くの方が乳腺症と診断されています。女性は30歳代に入ると、人によって乳腺組織が硬く触れるようになったり痛みが出たりすることがあります。 こうした状態を臨床的に乳腺症と診断したりするわけですが、乳腺症の出現には卵巣から分泌される女性ホルモンが関与しているので、閉経に向かって卵巣機能が衰えてくると次第に症状は軽減していきます。このように、臨床的に診断された乳腺症の場合、その多くは決して病気ではなく正常範囲内の変化と考えられており、治療を要するものではありません。 ただ、中には相当痛みが強い場合もありますので、痛みを軽減するための治療を行うことがあります。乳腺症の痛みには、多くの場合通常の鎮痛剤の効果が期待できませんが、更年期の漢方薬を服用していただくと女性ホルモンのバランスがよくなるせいか痛みが軽減することがあります。  
 乳腺症は、厳密に言うと生検や手術で病理組織学的に診断される必要があります。乳腺症には様々な組織像が混在していますが、その中に病理学的に前がん状態と考えられる組織が含まれていることがあります。これについては、乳腺症が疑われるものの乳がんを否定できない場合以外は、確定診断をするための針生検(※1)などの検査を行うことは過剰と考えますので、日常診療では臨床的に乳腺症と診断しています。ただし、このような場合でも前がん状態が含まれている可能性はありますので経過観察を勧めています。  


のう胞についてはいかがでしょうか

 最近は、超音波検査装置の性能がたいへん良くなりましたので、1~2mmぐらいの大きさの病変まで見えてきます。のう胞とは、乳管や小葉内の終末乳管の構造が破壊され風船状に膨らみ内部が液体で満たされたもののことで、単なるのう胞に対しては治療を要しません。超音波では1mm大ののう胞も見えますが、こうした大きさのものまで含めると、例えば患者さん全員に超音波検査を行った場合その多くの方にのう胞は存在すると思います。 若い方で乳腺密度が高い場合、マンモグラフィではのう胞を識別できないことが多いのですが、超音波では容易にみつけることができます。のう胞には、頻度は低いのですが、のう胞内に乳がんや乳頭腫などの良性腫瘍が存在している場合があります。そのため、のう胞内がんは超音波検査で初めてみつかることが多い乳がんです。のう胞内乳頭腫があった場合には、周囲に乳がんが発生するリスクが高まることが分かっているので、のう胞の場合であっても経過観察を勧めています。   


必ずしもマンモグラフィ検診が有効ではないということでしょうか

 例えば、20代~30代前半の患者さんに対してマンモグラフィ検査を行うメリットがあるかどうかという事を問われることがあります。公的なマンモグラフィ検診は、40歳以上の女性の方に対し2年ごとに実施していますが、会社検診では20歳代でもマンモグラフィ検診が行われていることもあります。また、自己検診をしたら何か触れたという理由などで病院を受診すると、まずマンモグラフィを撮ると思います。しかし、この年代は乳腺密度の高い方が多いためマンモグラフィで得られる情報は少ないと言えます。乳腺密度が高くても石灰化病変は発見することができますが、腫瘤性病変については見逃しが出る可能性が高くなります。実際に当クリニックでも触診とマンモグラフィでは異常なしと判定し、超音波検査で発見された乳がんが数例ありました。このようなことから、この年代では超音波検査の方が、有用性が高いと言えます。また、マンモグラフィは放射線被曝の問題もあるため、特に20歳代では十分に必要性を考慮した上で撮影すべきだと思います。現在、厚生労働省では、国家的プロジェクトとしてJ-START(乳がん検診における超音波検診の有用性を検証するための比較試験)を立ち上げ、マンモグラフィと超音波を併用する検診とマンモグラフィだけの検診の比較を行い、将来乳がん検診に超音波検査を導入するかどうか検討を行っています。  

クリニックの乳腺専門医として
先生は乳がんの啓発活動も積極的に行われていますが、どのような診療を目指されているのでしょうか

 最近は、積極的な乳がん啓発運動や患者会活動が全国で行われています。私も「あけぼの会」という全国的な乳がん患者会や「ピンクリボンキャンペーンin 郡山(※8)」での乳がん啓発キャンペーンに係っています。また、当クリニックにも乳がん患者会があり、定期的に会が開かれていて、テーマを決めて講義を行ったり質問や相談を受けたりする形で私も参加しています。患者さんたちは、本当に真剣で前向きに活動をされていて感心しています。  

 乳がんは、早期発見であれば治る確率が圧倒的に高い病気です。そして早期発見できれば小さな手術で済むことも多くなります。当クリニックでは、触診をした後、超音波検査を私自身が行い、マンモグラフィの結果を合わせて説明しています。そこでは、一人ひとりの患者さんの心理的な状態を見ながら説明を行うように心掛けています。私はこれまで専門医として数多くの患者さんと接してきた経験を活かし、これからも多くの患者さんに「ここに来て良かった」と思われるような外来診療を行うことで、地域医療に貢献していきたいと思っています。


 最後に先生のリラックス方法を教えていただけますか

 クラシック音楽を聴くことが好きですが、それ以外にもいろいろな音楽を聴いています。学生時代はギターを弾いたりしていましたが、医師になってからはなかなかプライベートな時間が取れなくて趣味というものを持てずに来てしまいました。今は、家族と外食する時間や家でゆったりする時間が一番の活力源になっていると思います。

 

※連載・医療人では、語り手の人柄を感じてもらうために、話し言葉を使った談話体にしております。


プロフィール
二瓶 光博 氏 (にへい みつひろ)

役  職 (2013年6月1日現在)
 いがらし内科外科クリニック 院長

出  身
 福島県会津若松市

卒業大学
 福島県立医科大学医学部 卒業

専門分野
 日本外科学会専門医、
 日本乳癌学会認定乳腺専門医

資格:所属学会等
 医学博士、日本乳がん検診学会マンモ読影資格A取得、
 日本消化器外科学会認定医、あけぼの会顧問医

医療法人やすらぎ会
いがらし内科外科クリニック

TEL:024-931-3200
FAX:024-931-3350
URL:医療法人やすらぎ会  いがらし内科外科クリニックホームページ




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◆用語解説◆

※1 針生検

術前に乳がんであるかどうか確定するためには、病理組織学的に診断される必要がある。従来は局所麻酔下に腫瘤を摘出するなど外科的生検が行われていたが、近年は専用の装置を使い超音波ガイド下に太針(直径1.4~1.6mm程度)で組織の一部を採取し病理組織学的な診断が行われている。

※2 エストロゲン

女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)が乳がんの発生と増殖に深く関与している。閉経前のエストロゲンは卵巣から分泌されるが、閉経後は副腎から分泌される男性ホルモンがアロマターゼという酵素の働きでエストロゲンに変化する。

※3 ERエストロゲン受容体(エストロゲンレセプター(estrogen receptor :ER))

エストロゲンはERに結合することでその作用を発現する。ER陽性細胞が存在すればホルモン依存性がありホルモン療法の効果が期待できる。

※4 プロゲステロン

卵巣から分泌される黄体ホルモンのこと。

※5 PgRプロゲステロン受容体(プロゲステロンレセプター(progesterone receptor:PgR))

エストロゲンがERに結合すると細胞の中で合成される最終産物で、PgRが存在しなければERからPgRに至る分子レベルの信号系に異常があると考えられる。ER陽性であってもPgR陽性細胞が存在しない場合や存在しても数が少ない場合は、ホルモン療法の効果は低いことが分かっている。

※6 HER2(human epidermal growth factor receptor 2)

細胞の増殖に関わる遺伝子タンパク。HER2陽性乳がんは、増殖性が強く予後不良であることが分かっている。HER2タンパクの過剰発現があるかどうかを免疫組織染色で調べたり、HER2遺伝子の異常増幅があるかどうかを特殊な方法で調べる。HER2タンパクの過剰発現あるいはHER2遺伝子の異常増幅がある場合にHER2陽性とする。HER2陽性乳がんは全体の15~20%程度。

※7分子標的薬

がん細胞などの増殖に必要なたんぱく質などの分子を標的とする薬。抗がん剤はがん細胞だけでなく正常細胞にも作用するため副作用が付きものだが、分子標的薬はがん細胞の増殖や転移を行う特定の分子だけを狙い撃ちにするので、副作用がないわけではないが少ないとされている。近年のがん治療薬開発の中心は分子標的薬で、現在数多くの分子標的薬が臨床試験中。乳がんに対してはハーセプチンなどいくつかの分子標的薬が保険適応で使える。ハーセプチンはHER2陽性乳がんが適応だが、乳がんの分子標的薬として初めて実臨床で使用されHER2陽性乳がんの予後改善につながった。

※8 ピンクリボンキャンペーンin郡山

ピンクリボン運動は乳がん早期発見のための啓発運動。全世界的に行われているが、乳がん月間の10月に郡山市でもピンクリボン運動の一環として「ピンクリボン in 郡山」が開催されている。ピンクリボン in 郡山は2009年から始まり、乳腺専門医の講義やゲストを迎えての特別講演などが行われている。2013年度は10月27日(日)に開催される予定。
ピンクリボンin郡山ホームページ

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