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医学関連学会記事

「生きるの教室/ドクター中川のがんと向き合う」
日時:2014.5.20.TUE 13:45~15:50
場所:福島大学附属中学校
主催:バイエル薬品
後援:第52回日本癌治療学会学術集会
   /福島県立医科大学器官制御外科学講座
いきるぞうは、いのちの尊さを考えてほしいという思いを込めて制作された「生きるの教室」のオリジナルキャラクターです。 画像:バイエル薬品

2014年「生きるの教室」 福島県唯一の訪問校
 5月20日(火)福島大学附属中学校において、第52回日本癌治療学会学術集会/福島県立医科大学器官制御外科学講座の後援による「生きるの教室/ドクター中川のがんと向き合う」が開催されました。この講義は、日本のバイエル設立100周年企画の一環として企画されたもので、2011年より東京大学医学部附属病院 放射線科准教授で緩和ケア診療部長の中川恵一氏を講師として迎え、「日本の未来を担う子どもたちに、がんの予防と治療の啓発を通じ、生きることの意義をより深めてもらう」ことを目的に継続的に開催されている特別授業です。今回は福島大学附属中学校の2年生、全生徒を対象に開催されました。

がんは日本人の死亡原因 第1位
 厚生労働省が公表している平成 24 年(2012)人口動態統計(確定数)を見ると、日本人の性別にみた死因順位別死亡数・死亡率(人口10万対)は、男女ともに悪性新生物(がん)が第1位になっており、福島県においてもがんが死亡原因の第1位になっています。
 多くのがんは生活習慣との関連が深いといわれており、弊誌の「頼れるふくしまの医療人」 取材記事でも、これまで様々ながんのリスク要因として生活習慣(喫煙や運動習慣、食生活など)との関係の深さを取り上げ、その改善の大切さや検診の重要性などを発信してきました。

健康教育プログラム ~がん教育~
 がん教育に取り組む中川恵一氏は、「生きるの教室/ドクター中川のがんと向き合う」の企画発表が行われた2011年の記者発表で、「がんは日本人死亡率の1位であるにもかかわらず、日本の学校教育ではほとんど教えられていない。これまで最も欠けていたがん教育に取り組むことはとても重要だ」と話し、その後スタートさせた同企画において、今回(2014.5)までにのべ1,464名の中学2年生に向けて授業が行ってきました。





「がん」に対するイメージの変化(開催前後のアンケート結果)
 ※アンケート方式:無記名式の個人アンケート 〈複数回答〉
 ※実施対象   :福島大学附属中学校 2年生〈回答者数計136名〉
がんに対するイメージ/授業開催前
 突然なってしまう病気
 治らない重い病気
 予防ができる病気
 早期に発見すれば治る病気
 老化とともになりやすくなる病気
 生活習慣が原因の1つとして考えられる病気
 手術が必要な病気
 痛い病気
 怖い病気 

 34.6%
 20.6%
 32.4%
 84.6%
 35.3%
 46.3%
 68.4%
 21.3%
 64.7% 
がんに対するイメージ/授業開催後
 突然なってしまう病気
 治らない重い病気
 予防ができる病気
 早期に発見すれば治る病気
 老化とともになりやすくなる病気
 生活習慣が原因の1つとして考えられる病気
 手術が必要な病気
 痛い病気
 怖い病気

  4.5%
  ―
 94.0%
 92.5%
 73.9%
 94.8%
 11.9%
  2.2%
  9.7% 


さらに詳しいアンケート内容は
こちらから>>
※データ提供:バイエル薬品株式会社


特別講師 :東京大学医学部附属病院 放射線科准教授/緩和ケア診療部長 中川恵一氏
特別ゲスト:「ひいらぎの会」 代表世話人 鈴木牧子氏
授業内容詳細:
学校長による「生きるの教室」趣旨説明
ドクター中川による講義
生きることと向き合うためのセッション
・「生きるの教室」オリジナルムービー
  “ いきるぞう ~いのちの河のものがたり~ ”の上映
がんと向き合うためのセッション(病気自体、予防法、治療法を学習する)
・がん理解促進のためのムービー“ がんちゃんの冒険 ”の上映
・がんの経験者 「ひいらぎの会」 代表世話人 鈴木牧子氏による
 体験談とミニトークセッション、質疑応答
休憩
ドクター中川による個人・グループワークセッション
“がんと生きる”をテーマに、“想起”~“喪失”の体験~“希望”の3ステップを実践、発表
「生きるの教室」の総括・質疑応答
学校からの「生きるの教室」終了挨拶
ドクター中川による講義
生きることと向き合うためのセッション
・「生きるの教室」オリジナルムービー
 “ いきるぞう ~いのちの河のものがたり~ ”の上映
日本人のがん患者は増加中
「日本人の約2人に1人はがんに罹患するといわれています。
教育現場においての正しいがん教育が必要です」
バランスを良く食事をとりましょう
「がんの原因の6割は生活習慣に関係。
食生活にも気をつけましょう」
タバコは、がんのリスク要因です
「喫煙はがんの最大のリスク要因といわれます。
受動喫煙もリスクになりますので、家族に禁煙を呼びかけることが大事です」
がんと向き合うためのセッション(病気自体、予防法、治療法を学習する)
・がん理解促進のためのムービー“ がんちゃんの冒険 ”の上映
.お父さんお母さんがん検診受けていると思う人、手を挙げてください」
(3分の2以上の生徒の手が挙がりました)
「皆さん素晴らしい。でも現在の日本の検診受診率は2割程度です。家に帰ったらご両親に検診に行って欲しいと伝えてください」
早期発見であれば、がんの完治する確率が大きく上がります
「がんを早期発見するためには、元気な頃に検診を受けることが大事です」
がんの治療法は自分で選びたい
「放射線治療なら、多くのがんの場合は入院せずに治療ができます東大病院の放射線治療は9割以上を通院で行っています」
「“がんちゃんの冒険”と“いきるぞう”のムービーはDVDになっています。お父さんやお母さんたちと一緒に見てください」
・がんの経験者 「ひいらぎの会」 代表世話人 鈴木牧子氏 による
 体験談とミニトークセッション、質疑応答

ドクター中川による個人・グループワークセッション
“がんと生きる”をテーマに、“想起”~“喪失”の体験~“希望”の3ステップを実践、発表
個人作業とグループワーク
大切な人が「がん」で亡くなってしまわないために何ができるのか
“想起”~“喪失”の体験~“希望”の3ステップを一人ひとりが考えた後、グループセッションを行い、代表生徒による発表が行われました。
自分たちの大切な人を思い浮かべながら
“いのちの大切さ”を学びます。
“がんとの向き合い方”を深く考えます。
大切な人が「がん」で亡くなってしまわないために、
自分たちに何ができるのか…
「お酒・たばこを控えてもらう」
「検診を受けてもらう」
「一緒に運動をする」
「今日もらったDVDを一緒に見る」
「自分が医者になる」
「大切な人たちの幸せを祈る」
「私たちが病気に対しての知識を深める」
「ポジティブに生きる、そしてがんについて話し合う」
「もしがんになってしまっても希望を捨てないことが大切」
※代表生徒による発表内容を一部紹介

  がんとともに生きる力を育む授業
       ~中川恵一先生へのinterviewから~
“生きるの教室のエッセンスを是非受け継いで欲しい”
「生きることやがんと向き合うということについて、こちらが意図していた深いところまで生徒の皆さんにしっかり届いていることが感じられ、今日はとても感動しました。今後は、全国各地に私が出向くことは難しいので、この“生きるの教室”のエッセンスを是非受け継いでいただきながら、全国の学校でがん教育に取り組んでいただきたいと思っています」


プロフィール
中川 恵一先生
東京大学医学部附属病院 放射線科准教授 / 緩和ケア診療部長
1960年 東京生まれ
1985年 東京大学医学部医学科卒業
      同年東京大学医学部放射線医学教室入局
1989年 スイス Paul Sherrer Institute客員研究員
2002年 東京大学医学部附属病院放射線科准教授
2005年 東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部長(兼任)
鈴木 牧子氏
「ひいらぎの会」代表世話人
リレーフォーライフ2013福島実行委員長 / リレーフォーライフ東北ブロック総括スタッフ / 福島県がん対策推進協議会委員 / 東北がんプロフェッショナル養成推進プラン評価委員 / 宅緩和ケア県北地域連携会委員 リンク
バイエル薬品株式会社
■お問い合わせ先:「生きるの教室」広報事務局(オズマピーアール内) 担当:新井様・竹田様
■TEL:03-4531-0206
■H P:http://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/index.php

福島県立医科大学 医学部 器官制御外科学講座
■H P:http://www.fmu.ac.jp/cms/surgery2/index.html