医療人材育成支援

次世代の医療人へ

医療人メッセージ
医療人メッセージ
 医療、あるいは医療人と聞いて皆さんの念頭に浮かぶ一番のイメージは、 臨床の場で患者さんを診断・治療する臨床医の姿だと思います。その医師の携わる領域は、よくよく見ていくと実に多様性に富んでいます。私が子供の頃に描いていた医師のイメージは、父親が地方で産婦人科の開業医をしていたことから、父のような町医者の姿でした。母は医療人ではありませんでしたが、家内工業のようなものですから父を手伝う形で医療の一端を担っていて、私はそういう両親の姿を見て育ちました。私の町では、開業医が夜間や休日の救急当番を順番で担う役割がありました。そのため産婦人科医である父も、当番の日は様々な病気やケガの患者さんを診療していました。そうした町の医療を支える父の姿は間近で見ていた私にとって刺激になり、同時に医療の大切さを知ったことから、私も医師になろうと思いました。
 私自身は、医師として主に大学で精神科の臨床、教育、研究に携わってきました。その点では当初描いていた父のような医師の姿とはまた違った道を歩んできましたが、医師の活躍の場は多様で、それぞれに重要な役割があります。そのような意味では、医療の分野とは、医学を勉強した人それぞれの興味・関心に応じた活躍の場が広く、色々な可能性があると言えます。
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 医療に係わる研究も、医療の大切な領域の一つです。医学が進歩した現代でも、ヒトの臓器の仕組みや病気の原因等についてまだまだ未解明の部分はたくさんありますので、医学の発展のために研究は欠かせないものです。その研究に携わる人々の中には、医学以外の分野を学んだ研究者たちもたくさんいます。実際にそうした色々な領域の人々が力を合わせて研究を行うことは大事です。しかし、実際の医療現場に研究結果を届けていく上では、現場を知り尽くし、且つ研究者でもある医師が先頭に立って研究を行い、実用化させることが重要です。ですから臨床医が研究に無関係ということは無く、臨床医であるからこそできる、あるいはやらなくてはいけない臨床的な研究を積極的に行うことが求められています。
 また、私は福島県立医科大学を定年で去った後から福島県の病院事業管理者を務めています。この仕事も実は医療の中の重要な領域の一つです。
 私はそれまで医療の一端を担ってきた医師として県立病院の運営にかかわり、ニーズに合った医療を県民の皆さんの生活の中に提供していくための体制を整える仕事に参加しています。そのように人々が生活している場、あるいは人々の生活に関わることの多くに、医療人、医師はかかわっているのです。
医療人メッセージ
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 医学があって医療がある、ということではありません。それは、医学が医療の中で出来上がってきたものだからです。その原点は、「いかにして病気やケガから人を救うか」という、その昔からの人々が行ってきた実際の人を助ける医療という行為から始まり、次に、「どうしたら効果的に助けられるのか」ということを科学的に明らかにしていく中で医学が出来上がってきたのです。ですから医療人として一番大切なことは、どの領域を選び、どのような道を歩むにしても、その共通の基盤は人々の「病気やケガから救われたい」というニーズに応えることにあり、最終的にはその出発点に戻って行かなければいけないことだと思っています。原点にあるその姿こそ、医療人、医師として我々が目指さなければいけない姿なのです。
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 福島県では東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所の事故後、県民全員が不安を抱えて生活せざるを得ない状況になりました。特に原発から30km圏内で生活をしていた方々は今なお避難生活を続けており、その大変な苦労は計り知れません。また、少子高齢化の問題があり、それは日本中どの自治体でも抱えていることではありますが、福島県では震災後特に顕著な形で進んでいる状況にあります。ですから、そこでいかに子供たちが健やかに育っていけるかということと、高齢者の方がいかに良い生活の質を保ちながら暮らしていくことができるかという、日本の抱えている課題が言わば凝縮した形となり、それに今の福島が直面しているということになります。しかし、こうした課題は日本に限らず世界の先進国で共通に抱えていることでもあります。ですから何処かに逃れても良い場所があるわけではなく、自分の足元でいかにそういう問題を解決していくことができるかということが、同時に非常にグローバルな課題でもあると言えるわけです。そういう意味では、我々だけが問題を抱え込んでいるわけではありませんので、我々がこの問題を解決するために努力するということは、言わば世界がチャレンジすべき普遍的でグローバルなニーズに、率先して応えることに他なりません。
 医療人にとって、現実の医療ニーズにどう応えるかというのは、非常にやりがいがあり、生きがいのあることだと思います。ですから福島の医療を支えていくこれからの若い人たちには、世界共通のグローバルな課題を皆さんが先頭に立って解決していくという、非常にやりがいのあることにチャレンジしようとしていることを理解いただければと思いますし、皆さんがどの分野を目指すにせよ、その課題解決に取り組んでいただきたいと願っています。
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 私自身も引き続いて成長過程にあると思っています。その中で、これまで持ち続け、今後も追い続けていかなければいけない夢は、精神疾患の分子レベルでの病態を明らかにして新薬の開発に繋げることです。精神疾患とは、心の病気であると同時に脳の病気でもあるという複雑な側面を持っています。このため心の領域と脳の領域の両方を同時に考えていくことが必要です。しかし、1人の人間ができることには時間、エネルギーともに限りがありますので、非常に奥が深いそれぞれの領域を全て研究することはできません。ですから私は実際に分離しがちになる傾向がある2つの領域を複眼的に見ながら医療を進めることができるかどうかという考え方を常に持ち、そして統合しながら精神科医療を進めていくという考え方を徹底させていきたいと考えています。また、医療提供という体制においても、それらを本当に密接に、相互に補完し合いながら進めていける、そういう医療の提供体制を作り上げていく、あるいは、この福島において言わばそのモデルを作り上げていきたいと思っています。
 震災以降は、今の福島が抱える課題として特に相双地域での精神科医療の再生、あるいは新生という形で理想に近い形を作っていくことを、自分の夢にうまく連携しながら構築していくことが必要だと思うようになりました。かねてから思っている自分自身の夢を、福島の抱えている課題を解決していく上で、いかに具体的に形にしていくか。それが今の私の夢です。
医療人メッセージ
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