医療人材育成支援
 

事実を認め、自ら判断出来る力

事実を認め、自ら判断出来る力
 人は食べなければ生命を維持することは出来ません。また、間違った食生活や誤った生活習慣(大人であれば喫煙や飲酒など)は病気の原因にもなり得ます。
 そして人は必ず死を迎えます。
 このような私たちの身の上に必ず起きる事実に対してどのように対応するのか。私たちはほとんど準備をしていません。
 仏教には「生老病死(しょうろうびょうし)」という考えがあります。人は生を受けて年を重ね、次第に病気を得やすくなって死を迎える。誰にも避けられない苦悩を指しています。いわゆる「四苦(しく)」です。
 人生で必ず誰にでも起きる事実を簡潔に表しています。
 しかし、病気になってつらい思いをしたり、事故にあって怪我をしたりしないにこしたことはありませんがそうなってしまった場合は出来るだけ苦しみが少ないほうがいいはずです。
 患者さんの苦痛を緩和するための手助けをするのが医療です。私たち医療者は人生で必ず起きる出来事で患者さんが困っているとき、苦痛を感じているときに手助け出来る力を備えておかなくてはなりません。
 時代はめまぐるしく変化しています。私が医師になった昭和50 年に比べると現在の医療は次元の違う世界のように感じますが患者さんに寄り添って患者さんの苦痛を緩和する手助けをするためには常に新しい知識、技術を習得できるように努力を続けなくてはなりません。そのためには医学雑誌を始めとした情報誌に目を通し、学会に参加し、医療以外の様々なジャンルの本を読み医療以外の社会活動にも目を向けて患者さんを全人的*に診ることが出来る幅広い知識と、事実を俯瞰(ふかん)できる能力を身につけて行きたいと思っています。
 これから大人になっていく皆さんには事実を事実として認めることが出来る力と真実を見極める能力を身につけて自ら決断できる力を兼ね備えていただけることを期待しています。
 医療者に限らず人は自分の人生を自分一人で生きていくものであって誰かに生かされるものでないはずです。しかし一人だけでは社会を生きていくことは出来ません。医療も一人では患者さんに貢献できません。医療にかかわる全職種が連携して一人の患者さんに相対します。連携するためには人と人とのコミュニケーションが欠かせません。常に家族や友人とコミュニケーション能力の醸成が出来ることを期待しています。
吉田先生の2016年6月のとある1日の仕事
【用語解説】* 全人的に診る
全人的:肉体と精神が融合した一個人と社会人としての個人を包括して全人と表した。
    (ヒトは肉体と精神が絶妙に融合して生命を維持している。また、現代においてヒトは社会人としてしか生き得ないと考えています)
診 る:診察する。