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この病気には“免疫” ということが関わっています。
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さまざまな要素によって免疫の働きに変化が起こると、免疫が自己を攻撃する(自己免疫)ということが起こり、それによりいろいろな病気(自己免疫疾患)を発症することがあります。その1つに関節リウマチ*という身体の免疫異常が主体となる炎症性の全身性自己免疫疾患があります。この病気の発症原因は未だ解明されていません。
私が医師になった今から30年前頃は、この病気は不治の病といわれ有効な治療法はほとんどありませんでした。それがこの十数年で治療薬の開発が進み、治せるようになってきました。
少し難しい話をしましたが、医学が進歩しているとはいっても、ヒトの身体やそのしくみは複雑で、まだまだ解明されていないことがたくさんあります。そして、そのために医学を学んで研究者として活躍している、あるいは臨床の場で働きながら研究も行っている医師がたくさんいます。医師の仕事には選択の自由度があり、臨床の場で活躍するだけではなく、研究者として医療に貢献している医師もいるのです。 |
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当時は、ただ自己免疫という特殊な分野があるというだけでしたが、ちょうど利根川進先生が免疫学の分野でノーベル生理学・医学賞を受賞(1987年)するなど、免疫学が病気の発症に関わっていることなど、非常に新しいことがわかってきた時代でした。でも有効な治療法がないということは、当然この分野に進んでも患者さんを完全に治すことはできません。ですから私の親や周りのベテランの先生にまで「なぜそんな道に進むんだ」と言われたこともありました。それだけ未知の分野だったのです。でも私にとっては逆にそれが非常に面白いと思いました。
それから私は、研究を行いながら臨床の場で患者さんも診てきましたので、治療法がない時代から治療法が出来て実際にどうなったのか、その全てを学ぶことができましたし、研究していたことが実際に病気を治す治療に結びついていくというプロセスを体験できました。未知の分野で、新しい自分の道を切り開いていくということ。それも非常に面白い道だと思います。 |
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【用語解説】* 関節リウマチ
リウマチとは、いわゆる骨関節(運動器)の腫脹、痛みなどが起こる病気の総称で、関節リウマチは、そのリウマチ性疾患の中で一番代表的な病気です。
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